私、23になってようやく湊かなえさんの作品を読みました。
私と同じ広島県の出身の方で少々驚きました。
告白の感想をつづりたいと思います。小説での感想です。
全体の感想
後味の悪い作品と名高い「告白」でしたが、私はとてもきれいに完結したと思いました。もちろん、登場人物の再生機会はなく、後味の悪い作品という感想にも共感できます。
面白い作品でした。まず何といっても作品に引き込まれる。登場人物達の心の何か大事なものが欠けている感覚。それぞれの過去や親などの外的要因を考えると、人間らしさが出て同情してしまいます。しかし、一番かわいそうなのは、女性教師の森口さん(いや、一番悲しいのは愛美ちゃんですが)ですので、復讐にはかわいそうだからやめてとは言えませんでした。
愛美ちゃんの事件の真相は、たまたま重なった偶然のような切ないようで、しかし事故でなく起こるべくして起きた感覚がありました。
思春期の子どもが持つ、満足のいく生活が当たり前ゆえの驕り、無敵感、自分のほうが周りより優れているという感覚。褒めてもらうことに対する喜びなど、人間だれしもが持っている感覚が根っこにあるので怖いですね。
大人になっていく今だからこそわかる。
思春期に抱いていた感覚は薄れていっていても、実際には誰しもがまだ持っている感覚かもしれないと考えると、少し怖いです。
人を下に見て馬鹿にすること、年齢的に大人になったからと言って、素晴らしい人間性を持つ方はあまりいない。見た目が変わっていくだけで、中身は未熟な大人は多い。この作品は中学生だけでもなく、まだまだ精神の幼い大人にも警鐘を鳴らしていると思う。
湊かなえさんは当たり前だけど、日ごろから良く考える方なのだと思う。きっと優しい方でもある。いつ書かれた作品なのかわからないが、きっと私の年齢より前か、近い年齢のときに書かれた小説なのだろう。
この作品は、人間の心理について、いろんな角度で考えなければこんな描写はできない。小説家はほとんどそうであると思うが、ほんとうすごい。
それに、殺人を招く心理描写だけではない。本当に評価されたのはこのストーリの展開だったり、多岐にわたる。まだまだ浅い読書経験で本を好きと言ってしまう私はなんなのだろう。これからたくさん読んで色んな感情や発見、心理状態を体験したい。
作品の時系列順に沿って自分が気になった感想
まず初め、作品に引き込まれたのは、間違いなく構成。一人の女性教師が永遠としゃべり続けている構成ですね。クラスに話しかけているのに、独り言のようで不気味さが感じられ大変面白かった。牛乳に混ぜるのは、なんだか実際の学校になじみが深く、より身近に自分の感覚に感じられやすいのではないでしょうか。
二章「殉教者」の美月ちゃん
タイトルかっこよすぎ、と書いてて感じました。いまさらながら
昔から頭のいい人は割と無条件ですごいと考えていた私。ちゃんと努力しているからすごいなと思っていた。それは間違いじゃないし、今も頭が良くて容量がいい人はすごいと思う。
しかし、この作品の美月ちゃんと修也はけた外れに頭がいいですね。2人して知識だけでなく応用してしまっているのですから。しかし、頭の良さは顕著で考え方も真実が見えている感覚もあるのに、間違いを犯す。頭の良さだけでなく、感情というものはすごいのですね。
美月ちゃんの行動力などはとくに好きでした。残念な結果になりましたね。
三章「慈愛者」姉の目線で語られるが、ほとんどは直君、プールに落とした男の子の母親のお話でした。
実際にいそうな母親なのが恐ろしいですね。平凡な家庭で平凡な能力。しかし、上を目指している。完璧を求めるキャラ。本当に当たり前にいるし、自分にも心当たりはある。
自分の理想を深く追求し、正しく生きることこそが幸せだと信じて疑わなかった母
「告白」「慈愛者」より引用
幸せの種類、感覚などを今一度考えたくなりました。
4、5章ではそれぞれの殺人犯の心理描写です。
しっかり描かれていました。最近の作品は、周りの視点しか描かれておらず読者の想像で補う作品が多い気がしていましたから。
2人とものつらい過去、作品の深みが出る章でした。2人の苦しみはリアルで、その感覚を知らない私はとくにいうことなどなく、ありのままの文体を受け取りました。
最終章
森口先生は牛乳に盛るように見せかけた。そんな作品でもヒットはしたと思う。実際、そんな終わらせ方をする小説家も少なくないはずだ。
しかし、結果は、、
1人の頭のいい男の子にとってはものすごい復讐ですね。最高の復讐になったともいます。復讐には何も残らない。多くのバトルアニメで語られてきました。しかし、この小説では良い終わり方にしか感じない。
修也君は再婚を知っても、母親に会うべきだったと思います。会えば何かが変わっているはずなのに。勝手に想像して自分の中で結論付けて非行を行う。そんな風になってしまった。母が最期に森口先生に言った言葉が私はすごく気になる。その言葉で感じること、修也君の人生は見方が大きく変わるから。
たとえ再婚したとしても、修也君の努力は母親に響いたのではないかと考えてしまう。
人間はもっと感情をぶつけるべきだと思った。
爆殺はまるで名探偵コナンのようだ。
コメント